更新日:2021/9/22
目次
外国人が自動車整備分野の特定技能1号を取得するための要件とは?
自動車整備企業が特定技能1号外国人を雇うための条件は?
自動車整備業では特定技能をどう活用すればいい?
自動車整備業で外国人を活用するための「技能実習」「特定技能」以外の選択肢とは?
自動車整備業界は、数年後には1万人以上人材が不足(2018年度の有効求人倍率 3.73倍)すると予想されています。
本外国人整備士.comコラムでは、自動車整備業の分野で「特定技能」を活用する際に知っておきたい基本事項や活用法をお伝えしていきます。
自動車整備業で特定技能ができた背景
「特定技能」は、人材不足が著しい分野において外国人の就労を許可する制度ですが、少子化や若者の自動車離れなどにより自動車整備士を目指す若者が激減した自動車整備業の分野において有効求人倍率が急激に高まっていることが背景にあり、自動車整備分野も外国人の受け入れによる人手不足改善を目指す「特定技能」制度の対象業種に認定されました。
(出典:厚生労働省「職業安定業務統計」)
特定技能で可能な自動車整備業務
特定技能外国人が従事できる3つの業務 ・自動車の日常点検整備 ・定期点検整備 ・分解整備
同じ業務に従事する日本人が通常行っている下記のような関連業務にも従事できます。
・整備内容の説明
・関連部品の販売
・清掃など
働ける期間
5年間ですが、技能実習1号、2号、3号と合わせれば最長10年間の就労が可能となります。
自動車整備分野については更新が無制限にでき、家族を呼べる特定技能2号の資格は許可されていません。しかし人材不足が深刻化しているため、今後許可される可能性は大いにあります。
2021.11.25 追記
11月17日、出入国在留管理庁が人手不足の深刻な業種14分野で定めている外国人の在留資格「特定技能」について、2022年度にも事実上在留期限をなくす方向で調整していることが入管関係者の取材から発表されました。
外国人就労「無期限(在留期限撤廃)」にとの方針発表について(リンク)
自動車整備分野の特定技能1号を取得するための要件
1. 日本語水準:日本語レベルN4以上の試験に合格
日本語の試験に合格すると日本語水準を満たしたことになります。具体的には、日本語能力試験(JLPT)でN4レベル、または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の合格が必要です。N4レベルについてJLPTのWebサイトでは下記の様に定義されています。
N4 基本的な日本語を理解することができる
読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解することができる。
聞く:日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
2. 技能水準:特定技能評価試験に合格
2つ目が自動車整備分野の特定技能評価試験に合格することです。特定技能は基本的に即戦力の雇用を目指した制度ですので、候補者は技能水準を満たす必要があります。特定技能評価試験のほかに、自動車整備士技能検定試験3級の合格でも、特定技能の在留資格を取得できます。
実際のレベルとしては、自動車の定期点検整備と自動車の分解整備の作業を一人で適切に行える技能水準です。
特定技能試験は日本各地で行われています。海外試験はフィリピンで実施されています。今後の試験予定はこちらをご参照ください。
特定技能評価試験は原則として日本語で行われるため、ゼロから日本語と技術を勉強し、受験するのは非常に大変です。難易度が高いため受験者数は伸び悩んでいます。
自動車整備分野の2号技能実習を修了された方は無試験で特定技能1号に移行可能。
技能実習生のうち、自動車整備の技能実習2号を修了した方は必要な技能水準・日本語能力水準を満たしているものとして、上記の技能試験・日本語試験は不要となります。
自動車整備企業が特定技能1号外国人を雇うための条件は?
「特定技能」の外国人を雇用したい自動車整備分野の企業は下記の3条件を満たし、かつ、当該の外国人を直接雇用する必要があります。派遣社員としての雇用は認められておりませんのでご注意ください。
①地方運輸局長の認証を受けていること
②「自動車整備分野特定技能協議会」 の構成員になること
特定技能1号外国人を受け入れてから4か月以内に加入する必要があります。
③同協議会に必要な協力を行うこと
また、上記には示しませんでしたが、「特定技能」外国人の受け入れのためには法律で定められた支援を行う体制を構築するか、あるいは支援内容の一切を「登録支援機関」に委託する必要があります。
自動車整備業では特定技能をどう活用すればいい?
ここからは自動車整備業界の企業が特定技能をどのように活用していくかについて考察していきます。
①技能実習生からの移行がメインとなる。
2020年9月末時点での特定技能人材の数は計90名ですが、その内技能実習から特定技能に移行した方が87名、特定技能試験に合格した方が1名、自動車整備検定試験3級に合格した方が2名となっています。
技術力と日本語能力が問われる試験に合格するのは難易度が高いです。一方技能実習2号、3号を修了された方は、無試験で特定技能に移行することができます。 実際、海外現地送り出し機関の方に話を聞くと、日本に行くために難しい試験に合格しなくてはならない「特定技能」ではなく、無試験で日本に行ける「技能実習」の方が人気だそうです。
技能実習生を採用するためには様々な制約がありますし、戦力化するまでには時間がかかりますが、技能実習制度を利用して該当の人材と関係性を深め、特定技能1号に移行してもらうのが、現状のところもっとも主流な特定技能の活用法となりそうです。
②ある程度のコストは覚悟する。
技能実習の場合には監理団体と海外現地の送り出し機関に支払う費用、特定技能の場合には該当の人材の*支援費用と海外現地の送り出し機関に支払う費用(海外から採用する場合)が発生します。
*特定技能外国人を雇うには、法律で定められた支援を行う体制を構築する必要があります。これは自社で行うこともできますが、通算で100枚を超える書類の作成が必要になるなどコストがかかるため、支援を委託する企業が多いです。 技能実習生に関しては最低賃金以上、特定技能に関しては同じ仕事に従事する日本人と同等以上の給与が必要になります。決して『安い労働力』ではないことを認識しておくべきです。
ですから、求人媒体に自社求人を掲載しても広告費が垂れ流しになるだけで人材は集まらない場合、あるいは今後の中長期的な採用戦略として早めに外国籍チームを作っておきたい場合に、ある程度のコストを覚悟した上で制度活用を開始することが望まれます。
自動車整備業で外国人を活用するための「技能実習」「特定技能」以外の選択肢とは?
自動車整備業で外国人を活用するには、ここまでご紹介した「技能実習」「特定技能」以外に、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格があります。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で雇用できる外国人は日本の自動車専門学校を卒業していることや、4年生大学で自動車のエンジニアリングを学んできたなど、細かな要件を満たしている必要があります。
ただ「技術・人文知識・国際業務」で外国人を雇用した場合、「技能実習」や「特定技能」のような煩雑な支援などは必要ありません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が取得可能な外国籍の方は少ないですが、選択肢として知っておくと良いでしょう。
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